坂口邸

安心と安全は、そこに自由を生む。2021.10

歴史ある茅葺屋根の、大きなお屋敷をリフォームしたい。
そんな相談から始まった、坂口さんと僕の物語。
難しい工事に頭を悩ませながらも、挑戦につぐ挑戦。
無事に完成した家は、果たしてどんな暮らしを
坂口さんにもたらしたのでしょうか。

坂口さん
坂口さんと話をしている様子の写真

「昔の雰囲気は残したまま、いまの良いところは取り入れて、次の時代までつながる家にしたいんだけど」

坂口さんからのリクエストは、僕にとってやりがいを感じると同時に「本当に出来るのかな……」という不安も芽生えるような難しいリフォーム内容でした。家屋でもあり、一時期は店舗としても使っていたという江戸時代から続く立派なお屋敷は、時代とともに増築・改築を繰り返し、その時々の使いやすさを追求した結果、ややいびつで、いまの暮らしには少し不便を感じることもある建物になっていました。
リフォームを行う中で難所になるだろうと思ったのは、茅葺屋根です。お屋敷の中で暮らし働く人たちを、長きにわたって風雨から守り続けてきた屋根は、経年の代償として大きく反り返っていました。

屋根の写真

難しさはやりがいを増幅させます。「やりながら、アイデアを出し合っていけばいいじゃない」
坂口さんのこの言葉が推進力となり、やりながら考え、考えながら動くというスタイルでリフォームに着手しました。反り返りを整えた茅葺屋根に天窓をつけるというアイデアも、やりながら、そして話し合いながら思い付いた発想です。

吹き抜けの写真 天井の写真

生活しやすい空間が欲しい。そんなシンプルな坂口さんの願いを叶えよう。僕は出来ることなら何でもやりました。何より当時はまだまだ現場を知らない若輩者でしたから、この世界をもっと知りたい一心で、がむしゃらに、でも冷静にリフォーム工事をお手伝いさせてもらったこと、よく覚えています。

庭で佇む坂口さんの犬の写真

生活しやすい空間。それは関工務店の哲学にも通じるところがあります。それは『平穏で、安全で、繁栄する暮らしを支えたい』という人間の根源的な願望。普通の暮らし。その普通がずっと続くことこそが平穏で、繁栄につながる。
改めて坂口さんに当時の印象を聞いてみると、開口一番「思ったより良く出来た」と冗談っぽく仰っていました。こういうことが言い合えるくらいの仲になれたことが、僕の中では財産。たまにお酒の席にも誘ってもらったり、他愛もないおしゃべりもできたり。

坂口邸の外観写真

坂口さんに「暮らすって、どういうことだと思いますか?」と聞いてみると、奥様の顔を一瞬見てから、「家があるってことだよ。この家は安心して暮らせる家。安心感の詰まった家。俺が好き勝手出来る、自由を感じる家だね。安全じゃなきゃ、自由にできないだろ?」
と言って、少し照れくさそうに愛猫にちょっかいを出していました。猫と戯れながら満足そうに微笑む坂口さんの表情が、リフォームの成果やその後の暮らしぶりをよく現していました。

建築概要

施工種別
改修工事
施工箇所
屋根、外壁、LDK、風呂、トイレ
構造
木造
所在地
長野市
見どころ
古民家改修、和モダン