徳永邸

未来を楽しみに出来る暮らしをする。2021.10

僕たちの町を襲った台風19号。
一夜にして“当たり前の暮らし”がなくなるという
厳しい現実がありました。
いまだに続く復旧・復興の日々。
そんな中でも未来を楽しみにすることが出来る
家づくりについて語った、徳永さんと僕の物語。

徳永さん
徳永さんと話をしている様子の写真

慎吾君は僕の親戚で、子どもの頃から一緒に遊び回っていた間柄。だからこそ、台風被害によって意気消沈している慎吾君や叔父さん、叔母さんの姿は見ていられなかったです。何とか力になりたいと思って駆けつけたことを覚えています。

徳永邸の外観写真 和室の写真

新築建て替え工事をする中で、慎吾君からは『2階に住居空間を作って欲しい』という要望をもらいました。2階に暮らせる場所があることの安心感は計り知れません。僕はその絶対的な安心感にプラスして、居心地の良い空間を目指そうと考えました。長い暮らしのはじまりです。ずっと住まうために必要な、心地よさのある家づくりです。

実際に2階で暮らすのは、慎吾君のお父さんとお母さん。新築工事が終わって住み始めてからまだ1年経っていないけど、叔母さんはこう言ってくれました。
「1年通して暮らしてみてどうなるか。未来が楽しみな家だね」

キッチン横の壁紙の写真

わかりやすい生活動線と、すべてを見渡せるカウンターキッチン。日当たりと風通しの良さ。叔母さんはこの家のお気に入りを次々と教えてくれました。台風被害は生涯忘れることはないだろうけど、それでもこうやって未来を楽しみにしてくれるような家づくりが出来たことは、僕の仕事の存在意義を感じる良い機会でした。

特徴的な石の壁紙写真

どんな家にしていこうか。
僕と慎吾君、叔父さんと叔母さんで図面を眺めながら、徹底的に話し合ったことを覚えています。
共同作業の仲間という感覚で、独りよがりにならない家づくりが出来たなと思っています。慎吾君は家づくりを振り返ってこう言いました。

「博之君は忙しいだろうに、僕の細かいこだわりや、突然の思いつきにもかなり対応してくれたし、さまざまな提案もたくさんしてくれたよね」

和室の畳のアップ写真

居心地の良い2階の空間を実現するために、僕は〈本物を使いましょう〉という提案をさせてもらったんです。キッチンパネルを本物のタイルにしたり、畳も本物の琉球畳を使いませんかと。使い込むことで味わいが深くなって、愛着が湧いて。長い暮らしを想像すると、本物を使うということが最適なご提案だと考えたからです。

窓際の写真 庭の木の写真

暮らし始めてもうすぐ1年の家。気に入った機能に囲まれて、未来に向かって暮らし始めた慎吾君と叔母さんに将来の夢を聞いてみたら、すぐに「災害のない暮らしがいいよね」と答えが返ってきました。

「安全な家がいいよ、やっぱりさ」
「この家なら安心だよね」

慎吾君と叔母さんの口から出た夢。安全で、安心な家で暮らしたい。「この家なら安心だと思った理由ってなに?」と聞いてみたら、叔母さんがすかさず
「だって、基礎工事からずっと見てるもの。柱の材料も本物。ちゃんとしたものを使ってくれてるってわかってるから、そりゃ安心だよ。それに、博之君ちゃんとしてるもん。ちゃんとしてるって、いちばんの安心感だよ?」と付け加えて僕の質問に答えてくれました。

安心して長く暮らせる家が作れたかもしれない。そんな実感が湧いてきたひとときでした。

建築概要

施工種別
新築工事
構造
木造
延べ面積
218㎡(66坪)
所在地
長野市
見どころ
1階農業用倉庫、2階LDK